火と土と時間の中で
- 5月6日
- 読了時間: 2分
更新日:1 日前
― 身延・竹下明宏氏を偲ぶ会にて ―
令和8年5月4日、ご縁をいただき、身延にある陶芸家・竹下明宏氏の工房を訪ねた。
この日は、竹下氏を偲ぶ会でもあった。

山に抱かれるように建つ古民家
深い屋根
黒く燻された梁
囲炉裏の火
煙
土
光
そこには、現代の建築が失いかけているものが静かに存在していた。
竹下氏は、身延山久遠寺の「三十番神」をはじめ、数々の作品を手掛けられた陶芸家でもある。土と火を通して、単に“器”を作るのではなく、祈りや気配までも形にしようとしていたのではないか。
そんなことを感じた。

空間を「整える」のではなく、
時間を積み重ねながら、
場そのものを育てていく感覚。
囲炉裏を囲み、
煙が立ち上がり、
煤が木に染み込み、
人の気配が場に蓄積していく。

人が亡くなっても、その人が生きた時間や思いは、場に残るのだと感じた。
この工房には、竹下氏の気配が今も静かに息づいていた。
便利さや均質さとは別の、もっと根源的な「豊かさ」。
特に印象的だったのは、空気が生きていること。
風
煙
香り
熱
光の揺らぎ
目には見えないものが、確かに空間をつくっていた。
建築とは、単に形をつくることではなく、
人と自然
時間と記憶
見えるものと見えないもの
その“あわい”を結ぶことなのだと、改めて感じた。
朽ちることさえ、この場所では命の循環の一部になっていた。
「全てに命を観る」
そんな自分自身の原点を、もう一度見つめ直すような時間だった。

空を見上げると、羽のような雲が浮かんでいた。
偶然なのか、必然なのか。

ただ、この日に、この場を訪れた意味を、静かに感じている。
0



